まちを育む大地のようなみんなの場所

まちなかオープンスペース だんだん

行政が中心市街地の商店街に空き店舗を借り上げて計画された、コミュニティスペース+コワーキングスペースのプロジェクト。一つの施設をつくることで完了するのではなく、グランドデザインの元、複数の空き店舗を整備して面的に活性化する計画である。今回整備した「まちなかオープンスペース だんだん」は、これからのまちづくりのきっかけとなる施設として位置付けている。そのため、住民の方々と共に考え、自らの手で実際に施設をつくることを企画した。津南町は9段におよぶ日本最大の河岸段丘をもつ。この地域の象徴として、人の営みを支える大地のような場所をまちなかにつくることを目指した。

HISTORY

住民の声から始まったプロジェクト

「気軽に集まり、交流できるスペースが町なかに欲しい。」津南未来会議で住民から上がった声をきっかけにこのプロジェクトは始まった。津南町は9段の河岸段丘でできた町で、国道沿いの商店街とその周囲に公共施設が集中しているコンパクトな中心市街地を持つが、商店街には空き店舗が目立ち、公共施設には十分なスペースがなく、人波もまばらだ。冬には3mを超える積雪のあるこの町では公園もあまりなく、集まる場所が不足している。商店街を活性化し、みんなで集まれる場所をつくるために、津南中心市街地グランドデザインを検討し、その第一弾としてこの施設を整備した。

LOCATION

雪と大地のまち、津南らしい場所をつくる

津南町は9段の河岸段丘でできた雄大な大地の上にできた町である。冬には3mを超える積雪がある日本有数の豪雪地帯である。この地域には縄文時代から人々が暮らし、厳しい冬と雪がもたらす恵みを享受してきた。

DETAIL

PLANNING

河岸段丘のような段状の床でつくられたオープンスペース

まちなかオープンスペース だんだんは、みんなでつくった県産材の杉箱を積層させた段状の床のオープンスペースである。杉箱は一部可動式になっており、形を変えることで、想い想いの使い方を誘発する装置としての床となっている。ある時は勉強するための机と椅子に、ある時は団らんのための車座に、イベントの際にはひな壇として使用ができる。 元々本屋さんであった記憶を継承し、施設の中央には天井までの大きな本棚をつくり、本棚で隔てられたスペースはワークスペースとなっている。個室スペースは会議に使うだけでなく、小さな子どもを安全に遊ばせることのできるスペースとしても機能する。

広い縁側スペース

だんだんに隣接するバス停の待合に使えるよう、サッシラインをセットバックし、広い縁側を設けた。夕方には多くの学生がバス待ちをする。

内外をつなぐ床

杉箱の床は内外をつなぐ。雪国の限られた心地よい季節を最大限に感じられるよう、引戸によって開放的な空間を生み出した。

まちの記憶を継承する

本屋の記憶を紡ぐコミュニティ本棚。まちの本棚となる。マルチテーブルは車座で語り合える、イベントにも使える場所。

みんなで施設のあり方を考える

商店街にどのような機能があるとよいか、市街地グランドビジョンとともにまちなかオープンスペースのあり方を皆で議論した。開催する場所も改修対象である空き店舗で行い、模型を使いながら実際の空間イメージも合わせて共有した。

中等学校で未来の津南を考える

津南中等教育学校で中高生を対象にワークショップを開催した。ワークショップ後には、中高生が什器のアイデアスケッチや施設の使い方のアイデアを持ち寄り、森林組合の協力を得て、木材を利用し実際に制作して施設に設置している。

自らの手で居場所をつくる

施設の中心となる杉箱は、県産材の杉集成材を利用し、住民と中高生の参加を募り、みんなでつくりあげるイベントを企画した。地元の大工さんの協力を得て、指導を受けながら製作をおこなった。

  • 所在地 新潟県中魚沼郡津南町大字下船渡戊445-33
  • 用途 コミュニティスペース+
    コワーキングスペース
  • 床面積 166.85㎡
  • 設計監理:建築 蘆田暢人建築設計事務所 
    担当:蘆田暢人
  • 設計監理:建築 大平政志建築設計事務所 
    担当:大平政志
  • 設計監理:建築 山田建設一級建築士事務所 
    担当:山田匠
  • 施工 上村建設工業
  • 写真 中山保寛

※地形データの画像は『3Dカシミール』 http://www.kashmir3d.com/ で作成しています。