都市の中、天に向かって踊る家

神宮前の踊居

まちに開かれた縁側や、窓が開けられた居間からあふれ出る家族団らんのにぎやかな声。かつて住宅は、それぞれが都市に対しての振る舞いを演じていた。
この住居は、都内有数のにぎやかな商業エリアに計画された。建築面積は約10坪。いわゆる「狭小住宅」と呼ばれる大きさの建物である。この「狭小」という言葉を全否定するような開放的で伸びやかな住居のあり方を模索した。
敷地の大きさから水平ではなく、垂直方向に伸びやかさを求め、その役割を階段に委ねた。2階と3階をつなぐ階段を前面道路側に出し、弧を描きつつ外壁を曲面ガラスで覆った。この階段は2階のダイニングに光を落とし、2階から3階にあがるときには、まるで天に登るような体験を与える。地階は2層吹き抜けとし、1階のスラブを浮かしたような構造とすることで、地下と地上が縁を切られるのではなく、階段が上下をつなぐ働きをしている。
突きあたりの土地という特性を活かした、開放感を生む大きな開口と、曲面の登りゆく階段のヴォリュームにより、華やかな祝祭都市の中で踊るような住居が生まれた。

DETAIL

  • 所在地 東京都渋谷区
  • 用途 住居
  • 規模 地下1階 地上3階建て
  • 構造 RC造+S造
  • 敷地面積 50.99㎡
  • 建築面積 35.59㎡
  • 延床面積 120.74㎡
  • 設計監理:建築 蘆田暢人建築設計事務所 
    担当:蘆田暢人、張賀鈞
  • 設計監理:構造 鈴木啓/ASA
  • 施工 栄港建設 担当:齋藤大作
  • 写真 中山保寛